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Kissシリーズ

第13章 天然のキス

 そりゃキライではないケド。
「じゃあボクとずっと一緒にいても、良いよね?」
 ………人が黙っているのをいいことに、言いたい放題言いやがって。
 でも何一つ否定できない自分がいる。
 それってやっぱり…。
「…でも私、アンタの面倒見続ける人生なんてイヤよ」
 精一杯の強がりで言ってみた。
「うん、もちろん身の回りの世話はボクがするよ」
 うん? それって…。
「だからキミは外で好きなだけ働いて良いよ。ボクはずっと家でキミを待つから」
 専業主夫宣言!?
「アンタっ! 私に養ってもらう気なの?」
「だってキミの方が出世しそうだし、ボクは働く気無いし」
 ハッキリ言いやがったぁ!
「キミだってその方が良いでしょ? 家でボクが待っていると思えば、頑張って働けるよね」
 確かに…。
「キミって身の回りのことはズボラだし、ボクは家事のことが得意だし。相性ピッタリ♪」
「ケンカ売っているようにしか聞こえないわ!」
「え~心外だなぁ」
 天使のような笑顔で、悪魔の毒舌を言いやがって!
「でも、絶対にボクはキミを離さないから」
 握る手に力が込められた。
「ボクから離れようとしても、絶対に追いかける」
「…まるでストーカーね」
「愛の成せることだよ。勉強も、ね」
 反論できないのが、悲しい。
「だから、ね」
 急に早く歩き出したので、慌てて私も付いて行く。
「ボクとずっと一緒にいよう?」
 輝く笑顔。
 ああ、眩しい。
 現実的な私には出来ない笑み。
 この笑顔、今まで十年以上も見てきたんだ。
 これからも見ていたいと思える。
 私も手に力を込めた。
「じゃあちゃんと私に付いてきなさいよ!」
 …多少、苦労はしそうだけど、
「うん! 大好きだよ!」
 この笑顔が側にあるのなら、それで良い。

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