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Kissシリーズ

第22章 オタクとのキス

休日、わたしと彼は街にデートに来ていた。

彼が見たいというマンガ原作の映画を見た後、昼食を食べた。

そして本屋やゲームのお店を回った後、一休みすることにした。

屋台でクレープを買って、自販機でジュースを買って、公園で一休みしていた。

その時、彼が少し暗い表情で言い出したのは…。

「僕の何が良かったの?」

「…? 何がって、何のこと?」

「その、僕と付き合うことを決めたキッカケとかさ」

「わたしはただ、あなたの優しいところが好きなだけ。あと趣味に夢中なところも」

「オタク…なのに?」

「うん。あなたが趣味に夢中になっている姿って、好きよ。明るくて、すっごくイキイキしてるし。何て言っても、可愛いしね」

「かっ可愛いって…。男に使う言葉じゃないと思うけど…」

「そうかしら? でも本当に可愛いと思うんだから、仕方ないでしょ?」

そう言うと、彼の顔が真っ赤に染まった。

やっぱり可愛い♪

「かっ可愛いのはさ」

「うん?」

「キミの方だよ」

「あら、嬉しい。アリガト」

笑顔で答えて、ふと気付いた。

「アレ? 口元、クリーム付いてるわよ?」

「えっ! クレープってあんまり食べないからなぁ。どこに付いてる?」

ティッシュを取り出して、口元を拭こうとする彼の手を止めて、わたしは身を乗り出した。

そして彼の甘そうな唇に、キスをした。

…やっぱり甘いキス。

彼の口の端に付いているクリームを舌で舐め取り、離れた。

「はい、取れた」

その後はクレープを食べ続ける。

「あっ、あのねぇ!」

「ん? どおしたの? 真っ赤な顔して」

分かっているのに、あえて知らんプリをする。

「キミって人は…! 可愛いのに、とんでもないことばっかりするんだから」

「ふてくされたあなたの顔の方が、よっぽど可愛いわよ?」

「だーかーらー!」

わたしはニコニコしながら、彼の話を聞く。

彼は気付いていないんだろうか?

あなたが「可愛い」と言ってくれるわたしは、あなたと一緒にいるから可愛くなれることに。

趣味のことで、まるで子供のように夢中なあなたを見ていると、わたしまで夢中になってしまう。

そう、あなたに―。

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