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Kissシリーズ

第23章 執事とのキス

彼の顔はキライじゃないから…。

けれどいきなり、彼はアタシの方に視線を向けてきた。

だから慌ててそらしたら…。

キキィーっ!

グラッと体が前のめりになった…と思った瞬間、意識を失った。

…しばらくして目が覚めた。

その時、ようやく自分の置かれている状況に気付いた。

バスが…事故った。

バスの中はひどく歪んでいて、アタシはイスの下に倒れこんだから、無傷だった。

でも運転手の人や、彼は!?

「うっ…だっ大丈夫? 生きてるっ?」

何とか瓦礫を避けながら、彼のいた方向に進む。

運転席の方は…残念ながら瓦礫が邪魔で、行けなかった。

だから近くにいたはずの彼の元へ行った。

彼はいた。

…だけど、瓦礫で体のあちこちが傷だらけになっていた。

「ねっねぇ! 大丈夫?」

彼もまたイスの下にいた。

だから身を縮ませて、彼の頬を軽く叩く。

キレイな顔が、血とほこりに汚れていた。

ハンカチを取り出し、ぬぐった。

「うっ…」

ゆっくりと目を開き、彼はアタシを見た。

「あれ…? 一体何が…」

「…どうやら事故に合ったらしいの。運転手の人はどうなったのか分からない。でもお互い無事でよかったわね」
顔を拭いてあげながら言うと、いつも柔和な笑みを浮かべている彼の顔が、無表情になった。

「オレは別に…。どうなっても良かったんだけどな」

「えっ?」

彼の呟きに、手が止まる。

「…別に生きてても死んでても、オレにとっては同じだし。あ~でも痛いのはキライなんだよな」

…アタシの、目の前にいるのは、誰?

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