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Kissシリーズ

第25章 バレンタインのキス

今、家でも簡単に作れるレシピも出ているだろうし、ムリにチョコを作って、彼にイヤがられることもない。

「でもなぁ、やっぱり普通はチョコよね」

…でも彼が嫌いだというのに、渡せば嫌われることは絶対だ。

「まっ、とりあえずはおせんべいかおかきを作ろっか! そっちの方が簡単に作れそうだし!」

声に出して、明るく振る舞ってみても、…何だか虚しい。

どーせ不器用だから、チョコなんて難しいものを作ったって失敗の確率高いし…。

それに何より、彼に嫌われたくない。

付き合い始めて二ヶ月経つけど、一度も彼から『好き』という言葉を聞いたことがない(泣)。

わたしが、

「あっあのね! ずっとあなたのことが好きだったの! だから、付き合ってほしいの!」

と真っ赤な顔で言うと、

「ああ、いいぜ」

…あっさり彼はそう言った。

その場ではしゃぐほど嬉しかったけど、彼の態度は変わらずクール…。

だから未だにわたしが彼の『特別』なのか、分からない。

分からないからこそ、嫌われるようなことはしたくない。

「…と思っていたのに、なぁんで作っちゃうかなぁ。もう…」

ブツブツ言いながら、紙袋の中身を睨んでしまう。

中身はチョコ入りの箱と、おかき入りの箱。

どちらも手作りだけど、渡すのはおかきだけ!

彼の家に来て、部屋に通されたわたしは、お茶を持ってくると言って出て行った彼を1人待っていた。

「お待たせ」

「あっ、うん!」

彼はホットココアを淹れてくれた。

「あま~い! あったかーい」

「お前、甘いの好きだよな」

「うん! だって女の子だもん」

「何だそりゃ」

彼は優しく微笑んで、わたしの頭を撫でてくれる。

「えへへ。あっ、そうだ。今日バレンタインデーでしょ? お菓子、作ってきたんだ」

そう言ってわたしは、おかき入りの箱を取り出した。

「じゃーん! はい、どうぞ」

「ああ、ありがと」

彼は笑顔で受け取ってくれた。

ここまでは良し!

彼は箱を開けて見て、笑った。

「ははっ、美味しそうなチョコだな」

「でしょー? 頑張って作ったんだよ、そのチョ…」

…チョコ?

アレ…? 

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