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Kissシリーズ

第26章 ホワイトデーのキス

今年のバレンタインデーは日曜日だから、みんな12日の金曜日に渡していた。

だからわたしも、金曜日にチョコを持って登校した。

だけど…人が多いバスの中では渡せず、その日1日は落ち込んで過ごした。

でも! 最後のチャンスがあった!

帰りのバスの中で、偶然、彼に会ったのだ。

幸い人も少なく、わたしはいつ渡そうか悩んでいた。

そして彼が降りる所になって、ようやくわたしは腰を上げた。

「ちょっちょっと待ってください!」

彼を追って、慌ててバスを降りた。

「えっ?」

「あの、コレ、受け取ってください!」

チョコを差し出すと、彼はキョトンとした。

…そりゃそうだ。

顔ぐらいは知っている女の子に、いきなりチョコを差し出されたら、誰だってそうなる。

「えっと…」

「ちょっチョコです! キライじゃなければ…」

「あっああ、うん。それじゃ、貰うね」

そう言って彼は受け取ってくれた。

わたしは一気に頭の中が真っ白になった。

チョコを渡すまでのことは考えていたけれど、その後のことは何も考えていなかったから。

「そっそれじゃあ失礼します!」

そう言って、思わず彼の前から逃げ出してしまった!

「えっ、ちょっと!」

「ゴメンなさーい!」

何に謝っているのか、自分でもよく分かっていなかった。

そしてわたしは走ったまま、駅まで来た。

…そして急に冷静になった。

チョコを渡したまでは良かったものの、来週の月曜日からどんな顔をしてバスに乗れば良いのか…と。

「あわっ!?」

せっせめて、名乗っておけばよかった…。

と考えるも、すでに時遅く。

次の月曜日から、自転車通学に変えたのは言うまでもない。

そしてバスが通る道を避けて、細道を通るのも。

友達はバスに乗らなくなったことを不思議に思っているようだけど、言えるワケがない。

なので毎日、必死で極寒の中、自転車をこぐ。

おかげで痩せてきた気がする。

このままバスに乗らなくても、自転車通いを続けても良いかもしれない。

もしかしたら…一ヶ月前のバレンタインで、彼には彼女ができたかもしれないし。

仲良く恋人でバスに乗られちゃ、それこそ窓から飛び降りそうだ。…わたしが。

にしても、今思い出しても顔から火が噴出しそう。

告白にもいろいろあるけれど、アレだけはないだろう!

「はあ~」

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