テキストサイズ

Kissシリーズ

第28章 お坊ちゃんとのキス

うやうやしく頭を下げ、お坊ちゃんの部屋に向かう。

机の上には山積みの宿題。

私立の有名校とは言え、宿題は公立校と同じぐらいは出るんだな。

机の上に筆記用具を出して、並べた。

そして再びベランダに向かう。

「お坊ちゃん、準備できましたよ」

「今行く」

首にかけていた白いナプキンを放り投げ、部屋に入るお坊ちゃん。

やれやれ…。

ヤル気にさせるのも、一苦労だ。

お坊ちゃんはイスに座ると、物凄いスピードで宿題をこなし始めた。

やればできるのに…。

元々顔だけではなく、頭の方もトップレベル。

ただヤル気にならないので、夏休みがはじまって二週間も経つのに何にも手付かずだったのだ。

ここの執事さんが言うには、毎年やらず、家庭教師にやらせていたらしい。

しかし成績は変わらず良いという。

…変なお坊ちゃんだ。

呆れながらも、感心しながら見ていると、約二時間で宿題終了。

「どっどうだ! 全部できたぞ!」

げっそりした顔で、それでも自慢げに語りかけてくるお坊ちゃんに、アタシは頭を下げた。

「おみそれしました。お坊ちゃん」

「ははっ…!」

アタシはスタスタと近寄り、宿題を確認した。

一応眼を通しておかなければ、本当にやったかどうか怪しいものだから。

しかし彼は全てを本当に終わらせていた。

これなら大丈夫だろう。

「お疲れ様です。今、何か甘い物でもお持ちしますね」

頭を使った後は、甘い物を取った方が良いだろう。

「あっ、待った」

しかし部屋を出て行こうとしたアタシを、彼は呼び止めた。

「はい? 何でしょう?」

甘い物のリクエストかな?と思っていると、彼はニヤッと笑った。

…この悪魔の笑みはマズイな。

何かよからぬことを考えている顔だ。

しかしアタシは心境を悟られぬよう、ポーカーフェイスを続ける。

「ご褒美、ちょうだいよ」

そう言って手を差し出してきた。

「ですから今、甘い物を…」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ