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Kissシリーズ

第28章 お坊ちゃんとのキス

「それとは別! ボクはお前の願いを叶えたんだよ! 何かくれたっていいじゃない」

宿題は自分の為でしょうが、とは言えない。

言ってもどうせ、反論されるから。

「ご主人様が使用人に何かねだってはいけませんよ。そもそもお給料は週払いの銀行振り込みなので、今は手持ちがありません」

「誰がお前の金なんてあてにするか! お金じゃなくて、お前が何かしてくれよ」

踏ん反りがえり、えらそうに命令してくる。

自分ができること…何だろう?

格闘技は得意だけど、彼にとっては興味もないことだろう。

「アタシがお坊ちゃんにできることですか」

「ああ、何だっていいよ。することはお前に任せるから」

人を試すようなことをやりおってからに。

…少し懲らしめる必要があるな。

アタシはお坊ちゃんの目の前まで歩き、跪いた。

「何? 足にキスでもしてくれるの?」

ニヤニヤしながら言ってくる。

…にゃろう。完全に調子付いている。

一生仕える主にならともかく、一夏のアルバイトの相手には絶対にしない。

「…そうですね。キス、します」

アタシは両手を伸ばし、お坊ちゃんの頬に触れた。

そしてそのまま素早く、唇に、キスをした。

「っ!?」

動揺が唇から伝わってくる。

キスは三秒ほどで、終わった。

「―コレがアタシからのご褒美です。満足いただけましたか?」

「おっ前っ!?」

見る見るお坊ちゃんの顔が真っ赤に染まっていく。

こういう顔を見ると、まだ中学生なんだなぁと思う。

いつもはこ憎たらしいけれど、まだまだ子供だ。

怒鳴られるかと思いきや、彼は口を噤んだ。

思ったより、刺激が強かったかな?

お坊ちゃんの眼が泳いでいる。

「…お前、夏休みの間しか、いないんだよな?」

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