Kissシリーズ
第29章 義弟とのキス
「姉貴が? どうして? 担任やおふくろに何か言われた?」
「説得するようには言われたけどね。ただわたしも勿体無いと思うのよ。あなたは頭良いんだし、もっと自分を活かせる所に行くべきだとわたしは思うの」
「絶対イヤだっ!」
バンッ!とテーブルを叩き、義弟は立ち上がった。
「姉貴と同じ学校へ行く! …でもそれがイヤなら、せめて姉貴が高校卒業するまでは、同じ学校に行かせてくれ。高校二年になる前に、もっとレベルの高い高校に編入する。でも家からは絶対出ないからな!」
「でもわたしは高校を卒業したら、家を出るかもしれないわよ?」
「そんなっ…!」
家を出ることは、高校に入った時から考えていた。
本当は高校も寮のある所にしようかとも思った。
けれどその時はまだ、両親の海外転勤の話しなんて無かったから…。
家に義弟と二人だけじゃないなら、何とかなると思っていた。
けどもう…終わりにしたほうが良いのかもしれない。
「姉貴は…平気なの? オレと離れても」
「離れていても、あなたはわたしの大切な義弟よ。それに変わりは一生無いわ」
自分がどんなに残酷なことを口にしているか、自覚はあった。
けれど義弟の強い思いには、同じく強い思いで返さなければ負けてしまう。
「…姉貴は、さ。本当は起きていたんだろう?」
ドキッと心臓が嫌な音を立てた。
「三年前のあの夏の日、オレがキスしたの、知っているんだろう?」
…触れてほしくないこと、逃げ回っていた現実に、直面する時がきてしまったか。
「ええ…、起きてたわよ」
「ならっ! 分かってるはずだ! オレが姉貴のことを、本当に好きなことを!」
「大声を出さないで。確かにキスされてたのは知ってた。でもその後のあなたの態度でも、充分に分かることよ」
「分かっているなら…受け入れてよ」
泣きそうに俯く義弟の姿を見ると、心が痛い。
「…でもわたし達、姉弟なのよ? それは周囲の人達や両親が知っていることだし、恋人になるなんて許されない」
「でも本当の姉弟じゃない」
「それは…そうだけど」
正直、義弟がわたしを女性扱いしてくれるのは、嬉しかった。
それは多分、義弟のことを…。
「…だけどやっぱりダメよ」
「ダメじゃない! ダメなんかじゃない!」
義弟は泣きながら、頭を振る。
「…いつから?」