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Kissシリーズ

第29章 義弟とのキス

「えっ?」

「いつから、わたしのことを好きになってたの?」

だからだろうか。

こんな言葉が口から出てしまったのは。
「はじめて会った時から…ずっと。一目惚れだったんだ」

そんな昔から…。

「最初は『姉』だと思い込もうとした。だけど他の男と一緒にいるところとか、見たらもうっ…ムリだった」

他の男って…ああ、多分、学校帰りとかで一緒に歩いていた男の子のことだろうな。

義弟の思いに気付いた時から、わたしは恋愛に臆病になってしまった。

だから自分から恋人を作ることも、告白されても受け入れることもしなかった。

義弟は本当に早くに、恋心に目覚めていたんだな。

「オレじゃっ…ダメなのかよ?」

ダメじゃないからこそ、こんなに悩んで苦しんでいる。…わたしも。

「父さんや義母さんに、何て言うのよ?」

「はっきり言うよ! オレが姉貴のこと、好きだって!」

「何も恋人じゃなくても、ずっと一緒にいられるのよ? 姉弟でも」

「それじゃあ、イヤなんだよ!」
「ワガママね」

「オレ、まだガキだもん」

…こういうところで『子供』を持ち出してくる部分、やっぱり子供だ。

多分、いや、絶対に何を言っても聞き入れちゃくれないだろう。

わたしがムリに恋人を作っても、きっと壊される。関係を。

そして逃げても…追ってきそうだ。義弟なら。

なら、もう諦めるしかないだろう。

わたしは立ち上がり、義弟と真っ直ぐ向き合った。

相変わらず泣いているけれど、強い意思を込めてわたしを見つめている。

「…分かったわ」

「へ?」

わたしは手を伸ばし、義弟の頭と腕を掴んで引き寄せた。

そしてそのまま…

「んんっ!?」

キスをした。もちろん、唇に。

「あなたの熱意には負けたわ。これからは姉弟として、そして恋人として、よろしくね」

「…うん。うんっ!」

義弟の目から、ボロボロ涙が出てくる。

わたしはまだわずかに低い義弟を抱き締めながら、音もなくため息をついた。

さて、両親には何て言おう?

あっ、その前に担任の先生にも連絡しなきゃ。

『やっぱりわたしにはムリでした』って。

その意味は進学の説得もあるけれど、義弟の執念深さにも負けましたってね♪

はあ…。

前途多難だけど義弟のこの強い思いがあるなら、何でも乗り越えられそうだ。

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