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Kissシリーズ

第30章 先生とのキス

先生はとっても落ち着いていて、穏やかな人。

だから他の女子生徒や女性教師からも人気が高かった。

もちろん、男子にだって人気がある。

「はぁあ~…」

後8年、わたしは待てる。

けれど先生の中では、とっくに過去の思い出になっているかもしれない。

そうしていつか、近い歳の女性と結婚するのかもしれない。

「イヤなんだけどなぁ…」

先生のことは、今でも好き。

同じ部に入っているおかげで、温室で二人っきりで作業をすることもあった。

でもそれはきっと、他の部員達もしているだろう。

別にわたしが特別扱いを受けているワケじゃない。

その事実がわたしを打ちのめす。

「どうしよう? もう一回告白しようかな?」

でも前の告白を忘れられていたら、ダブルパンチの可能性がっ…!

「ふう…」

眼の前にあるのは、先生が丹精込めて育てた花壇。

今日はここで作業をするから、待っているようにと先生に言われた。

わたしだけしかこの温室にいないから、それは嬉しいんだけど…。

「アンタ達は良いわね」

キレイに咲き誇るパンジーや三色スミレの花は、先生が大事に育ててきた。

先生がずっと見つめて、優しく触れてきた花々。

わたしはそっとパンジーの花に触れた。

春らしい可愛い花、わたしの大好きな花。

なのにこんな花達にまで嫉妬するなんて…。

「マジでガキ」

苦々しく呟いてしまう。

本当に自分が子供でイヤんなる。

先生と17歳も歳が離れているのがいけないんだ。

せめてあと10歳…いや7歳ぐらい、わたしの歳が先生に近かったら良かったのに。

「こら。花に向かってなんて言葉をかけているんだ、お前は」

「わっ、先生!?」

いつの間にか、先生が温室の扉を開けて中に入って来た。

「何かおもしろくないことでもあったのか?」

ジョウロに水を入れながら聞いてくる先生が、ちょっと憎らしい。

「うん、まあ…恋愛のことでちょっと」

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