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Kissシリーズ

第30章 先生とのキス

立ち上がり、先生の顔色を見ながら言ってみる。

「そっか」

…だけ? ノーリアクションも良いところ。

「はー…」

何かいい加減、疲れてきたかも。

「それで先生、今日は何をすれば良いんですか?」

「ああ、その花壇に雑草が生えていたら抜いてくれ」

「はぁい」

わたしは再び花壇に視線を向ける。

咲いている花の影に、ちょこちょこと雑草が生えているのが見える。

それを指で摘み、ちょいちょい抜いていく。

でも先生が手入れを良くしているおかげで、すぐに終了。

「先生、終わりました~」

「ああ、ありがとな」

先生が水を入れたジョウロを持って来たので、わたしは場を譲る。

手が汚れたので、洗うことにした。

「ここの花、キレイに咲いただろう?」

「ええ、そうですね。春らしいです」

「お前、パンジーとスミレ、好きだしな」

「えっ? 知ってたんですか?」

「前に言ってきただろう?」

ああ、そう言えば…。

春に咲く花で何が一番好きか聞かれて、わたしはパンジーとスミレと答えた。

その時も、今みたいに先生と二人っきりだったんだけど…。

わたしは水道で洗った手をハンカチで拭きながら、先生の背中を見つめた。

「じゃあ先生は、わたしの為に花を咲かせてくれたんですか?」

ビクッと、後ろから見ても分かるぐらいに先生の背中が動いた。

…ウソ? あっ、いや。本当だったの?

カーッと顔が赤くなるのを感じる。

けれど先生の顔も、赤く染まっているのが見える。

わたしはゆっくりと先生の背中に近付いた。

そしてそっとその背中を後ろから抱き締める。

「…先生、覚えててくれたんですか? わたしの告白」

「わっ忘れるワケないだろう」

動揺している先生は、とても17歳も年上とは思えないほど可愛かった。

「じゃあ…本当に結婚してくれますか?」

ジョウロを持つ先生の手が、ピタッと止まった。

「待ちくたびれてしまったのならば、すぐに言ってくださいね? わたし、先生に嫌われたくないから…」

うっとおしがられるぐらいだったら、好きだなんて言わない。

嫌われるんだったら、自ら離れる方がずっと楽だから…。

「わたし、本当に先生のことが好きなんです。だから好きなままで良いのなら…その証拠をください」

「お前なあ…」

振り向いた先生の顔はとても近い。

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