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Kissシリーズ

第30章 先生とのキス

けれどお互い離れようとしなかった。

先生の体が、わたしに近付く。

そして…眼を閉じて待った。

やがてそっと、唇に感じた先生からのキス。

眼を開けると、先生は顔を真っ赤にしていた。

「…本当はせめて、お前が中学を卒業するまではやめておこうと思っていたのに」

「それじゃあわたしの方が待ちきれませんよ」

ぎゅっと先生の頭を抱き締める。

高鳴っているわたしの心臓の鼓動を聞かせたくて、抱え込むようにした。

「…とりあえず、しばらくはお前とオレの関係は先生と教え子のままだ」

「はい、分かっています」

「だから何もしてやれない。オレにはせいぜい、お前の好きな花を咲かせてやることぐらいしかできない」

「それだけで充分です。それに…」

わたしは腕の中の先生に、にっこり微笑んで見せた。

「好きでい続けて証拠はちゃんと受け取りましたから」

そう言って自分の唇を指さした。

「…バカ。もうしないからな」

「はい。中学を卒業するまで、ガマンします」

可愛い人、わたしよりも純情かもしれない。

「そう言えば、パンジーと三色スミレの花言葉、知っているか?」

「えっと…」

「『純愛』って言うんだよ」

「それって…先生からのわたしへの気持ちだと受け取って良いんですか?」

「…じゃなきゃ、こんなに大切に育てたりしない」

少しムスッとした先生は、ちょっと子供っぽい。

「ふふっ。嬉しいです」

「でも本当にオレで良いのか? その、今はこうだが、10年もしたらオレは37だぞ?」

「何歳の先生でも、好きな自信あります。大丈夫です。だから先生」

「ん?」

「あと5年、待ってますからね」

耳元で囁くと、先生の顔はよりいっそう赤くなった。

「おまっ…小学生が何を言うんだ!」

「先生こそ、今の格好は何ですか?」

「うっ…」

先生は未だわたしの腕の中にいる。

もう反撃する気力はないらしく、わたしに頭を預けてくれる。

先生の頭を優しく撫でながら、わたしは思い出した。

パンジーと三色すみれのもう一つの花言葉を。



『わたしのことを、想って』

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