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Kissシリーズ

第31章 昔からのキス

―後から知ったことだが、アイツはあの後、わたしをイジメていた男の子達とケンカしたらしい。

しかも三対一での圧勝だったという…。

「けっケガをしてたなら、寝てた方が良いんじゃないか?」

「…ちょっと聞きたいことがあってさ」

「ん? 何だ?」

オロオロするわたしとは反対に、アイツは相変わらずの無表情だった。

「キミはボクが笑えば、嬉しいの?」

「えっ? あっああ、嬉しいが…」

「じゃあ…」

アイツはわたしの両肩を掴み、顔を近付けてきた。

そして…唇に唇を付けられた。

 ちゅっ

「………えっ?」

驚いて眼を丸くするわたしとはこれまた反対に、アイツは始めて微笑んで見せた。

「あっ、笑った…」

「うん。こうすると嬉しいから、ボクは笑えるみたい」

「なっならお前の笑顔を見たい時は、口を付ければ良いのか?」

すると一瞬にして、アイツの顔が真顔に戻った。

「…キミ、キスの意味、知らないんだね」

「へっ? キス?」

人よりどん臭かったわたしには、当時、キスの意味を全く理解していなかった。

だから口付けのことも、手と手をつなぐようなものだと思っていた。

「まあいいや。キミも嬉しそうだし」

「そっそうか?」

キスの意味は分からなくても、何となく胸がポカポカとあたたかくなっている。

顔も熱くなっていくのが、自分でも分かる。

「アレ? 何かヘンかも…」

鼓動もいつもより早くて、思わず胸に手を当てた。

「ふぅん。キミは考えるよりも、体で反応するタイプか」

「へっ? 何が?」

「ううん。その方がボクにとっては好都合だから」

そう言ってアイツは笑い、再び唇に唇を付けてきた。

口付けは甘くて、頭の中が熱くて、ぼ~っとしてしまう。

…高校生になった今、思う。

きっとそれは、キスに酔っていたせいなんだと。

だ・け・どっ!

「お前、よくもファーストキスを奪いやがったなー!」

「何を今更」

高校生になっても、アイツは変わらなかった。

相変わらずの無表情で、わたし以外の人とはあまり関わろうとしない。

それがちょっと悲しいけれど…正直、嬉しかったりもする。

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