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Kissシリーズ

第5章 眠り王子とのキス

「こんにちは」

明るい声と共に、あたしは病室に入った。

「元気してた?」

けれど返事は返ってこない。

部屋にいるのは一人の青年。

あたしの彼。

でも…もう三年間、ちゃんと話していない。

「まっ、しょーがないんだけどね」

三年前、当時はお互いに高校三年生だった。

同じクラスになって気が合って、彼の方から付き合いたいって言われた。

元々気になっていたから、すぐにOKしたっけ。

でも…あたしは変わってしまった。

イヤな方向に。

明るくて社交的な彼は、とても好かれる存在。

だからたくさんの友達がいて、好意を持つ女の子も少なくなかった。

だから…嫉妬深くなった。

彼を必要以上に束縛したり、しつこいくらいに電話やメールをしていた。

周りからいくら言われても、止まれなかった。

今思えば、よく警察に言われなかったなぁなどと思ってしまう。

そんなあたしを、彼がフッっても何にも言えなかっただろうな。

彼が事故に合ったのは、あたしの誕生日だった。

その頃、彼から話がしたいと何度も言われていた。

何となく、別れの予感がしていたあたしは、今度は逆に距離を取ってしまった。

だから何かしら理由をつけては、話から逃げていた。

でもあたしの誕生日、彼は近くの公園で待っていると言ってきた。

来てくれるまで待っているって。

あたしは行きたくなかった。

でも…それまでの自分を振り返って、お互いに別れた方が良いんじゃないかって、思えた。

待ち合わせの時間から、4時間が過ぎていたけれど、もしかしたら本当に待っているかもしれない。

そう思って、あたしは家を出た。

そして公園に行く途中で、騒ぎに気付いた。


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