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Kissシリーズ

第34章 潔癖なキス

その男は、美しい容姿をしていた。

…が、性格にとても問題があった。

「僕、汚いの嫌いなんだよね」

極度の潔癖性で、汚い物が大嫌い。

通っている高校も、彼のせいと言うかおかげで、ピカピカに掃除されている。

掃除しているのは主に、彼のファンの女の子達。

男子生徒達は当初、反発するのと同時に彼にケンカを売って、物の見事に玉砕していった…。

彼はでも、女子生徒達も近づくのを嫌う。

どんなに可愛く、キレイな女の子でも、側に近寄らせない。

―はず、だった。

わたしはと言えば、彼には近寄らないタイプの生徒だった。

君子危うきに近寄らずとは、彼の為にある言葉だと思った。

なので触らぬ神に祟りなしとばかりに、遠くから見るだけだった。

しかしある日の放課後。

図書室に本を返しに行った後、帰りのバスの時間がせまっていた。

人気の無い放課後だったので、わたしはつい階段を駆け下りた。

「ホントはダメなんだけど…」

カバンを両腕に抱えながら走っていると、足がもつれた。

「えっ!?」

階段は残り5段、落ちれば保健室行きになるのは眼に見えるようだった。

しかし両手が塞がっていた為、諦めて眼を閉じ、身を固くした。

 どさっ

…けれど、わたしは受け止められた。

「…えっ?」

恐る恐る眼を開け、顔を上げた。

すると、彼が、いた。

「えっ、あっ、ごっゴメンなさい!」

慌てて彼から離れようとしても、体が震えていまく動けない。

「あの、嫌なら床に突き飛ばしていいから!」

本当は良くないが、廊下に到着した後なら、階段を落ちる衝撃よりも軽いと瞬時に思った。

けれど彼はじっと、わたしを見ている。

「えっと…あの…」

声をかけても、真っ直ぐに見られるだけ。

…恥ずかしいのと、居心地が悪いのが、心の中で渦を巻く。

「…何で平気なんだろう?」

ふと彼はポツッと呟いた。

「なっ何が?」

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