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Kissシリーズ

第35章 クリスマスのキス

わたしの住む街には、冬限定で見られるイルミネーションの公園がある。

そこの公園では樹や遊具、または手作りの物でイルミネーションを飾り付け、公開されている。

手作りの物は人形や小さな家など、創作に凝った物が多い。

冬休み、特にクリスマスともなれば、恋人連れや家族連れ、友達を連れて訪れる人は多い。

けれどわたしは一人でジックリ楽しみたいタイプだった。

だから友達の誘いも断り、毎年一人でここに訪れる。

一人でイルミネーションを見に来たと言うと、寂しいと言う人もいるけれど、でもわぁわぁ・きゃあきゃあ騒ぎながら見たくはないからな。

女子高校生としては、変わった感覚を持っていることは自覚している。

けれどいつもは友達と騒いでいる分、こういう幻想的な美しさは一人で堪能したい…と思っていたのに。

「…何で、アンタがいるのよ?」

「それはこっちのセリフだ。友達の誘いを断っといて、何している?」

ぶっきらぼうなわたしの質問に、これまたぶっきらぼうに返してきたのは、同じクラスで同じグループにいる男子生徒の一人。

わたしは学校では男女入りまじったグループに入っていて、コイツもそうだった。

けれど仲が良いとは、決して言えない。

コイツはいっつも無表情で、たまに口を開けばさっきのようにぶっきらぼうな言い方しかしないからだ。

愛想がないったら、ありゃしない。

「わたしは一人で見に来たのよ。こういうの、一人でじっくり楽しみたいタイプだから」

…でもまあ、コイツに対するわたしの態度も、愛想は無いわね。

「ふぅん…」

「んで、アンタの方は? 友達と来たの?」

キョロキョロと周囲を見回すが、いつもの知った顔はいない。

「いや、俺は…。ただの散歩で寄ってみただけだ」

「…そっ。じゃあわたし、他の所、回るから」

とっとと背を向け、わたしは歩き出す。

何せ公園は広い。

遊具がある所から、芝生だけの所、また海に面した所もあって、一周するだけでも一時間はかかる。

今年は点灯時間が短いらしいし、とっとと回らなきゃ、全部なんて見られない。

わたしは白い息を吐き、マフラーに顔を埋めながら早足で歩き出す。

スタスタと。

けれどすぐ後ろから、スタスタと歩く音が聞こえてくる。

まさかと思い、そっと後ろを振り返ると、アイツがいた。

…まあ歩くコースは決まっているし。

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