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ソレは、そっと降り積もる・・・。

第1章   最悪の出逢い

  


 両親は、娘を連れて行かれまいと声を上げた。


「申し訳ないが婚約者は、具合が悪いようだ。医者に診せるので失礼する。」


「待って!珱月っ!!」

「お姉ちゃんっ!!」


 彼女を抱き上げて車に乗り込むときに叫んでくる。


「・・・かあ、さん・・・・・・・・・っ」


「大丈夫だ。昨夜の所為だから心配ない。きちんと医者を手配してある。」


 うわ言のように呟く彼女に告げてドアを閉めた。


「出せ。」


「はい。」


 車は、ゆっくりと公道に出て行く。


「珱月っ!!」


 外から微かにだが母親の声が訊こえた。


「んっ・・・?!!」


 後頭部を押さえられて唇が重なった。一気に昨夜の記憶が生々しく蘇る。


「やっ・・・」


「おはよう、〝婚約者殿〟。」


 耳元で囁かれ意識を手放した。



 権力に敵うものなどない・・・・・・。


  

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