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ソレは、そっと降り積もる・・・。

第24章  チューベローズ

  


「〝黒髪の乙女〟・・・心配無用だ。俺は、これでも国王だから。君の手を煩《ワズラ》わせたりしない。
 見ていてくれ。それでどうしても、無理になったらまた・・・来てくれないだろうか。」


『王さまっ。』


「おっと・・・なんだか、複雑な気分だな。」


 身体は、妻だが中身が違うだけで抱き締められても不可思議な感覚に包まれるだけだ。


『王さま・・・・・・(本当は、誘惑出来た。王さまを手に入れられた・・・それなのに出来なかった。そう、出来なかった・・・・・・。だって、あなたが私に屈託なく笑うから。)』


(『クロエ・・・・・・』)


『王さま・・・・・・いつでも、お呼び下さい。』


「ああ、ありがとう。」


 彼女は、去った。



 誘惑の残り香は、どこまでも。


  

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