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やさしく愛して

第1章 やさしく愛して

  やさしく愛して

                   双葉 如人

         1

 わたしは、恒さんの肩に頭をあずけて、寄せては返す波を見続けていた。
 恒さんが、
 「霧子さん、
  海を見に行こう」
 と言って、つれて来てくれたのだ。
 恒さんの家で、朝食をすまし、10時すぎに出発した。
 すこし早いかなと思ったが、わたしに海を見せたいから、夕方にならないうちに、志摩半島に着きたいと言った。
 ずっと静かな波を見ていると、胸の中にある小さなしこりのようなものが、溶けていく。
 恒さんは、わたしに、そんな小さなしこりがあると気づいて、海を見に行こうと言ってくれたのだ。
 なんて、優しい人だ。
 肩に頭をあずけたまま、恒さんの手をとり、波を見ながらしずかに涙を流しつづけた。
 その涙とともに、しこりも全部流れていった。
 恒さんが、握っていた手を離し、わたしを抱きしめて、
 「霧子さん。
  結婚しよう」
 「はい。
  わたしも、
  いま、
  そう思っていたの」

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