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恋の声

第2章 彼との出会い

「俺は、佐々って苗字。ささって名前変わってるだろう?あなたは?」

え、初対面なのに…コミュニケーション能力高いタイプの苦手な人だ
「瀬戸川です」

「え?瀬戸内?」

「いや違います。せと…」

「瀬戸さんね!」

あぁもういいや「は、はい」

「仕事、楽しくないの?」
ドキリとした。でも、別に仕事相手じゃないしいいか…
「まぁ…楽しくないです。出来れば辞めちゃいたいかな…」
苦笑しながら私は顔を上げると、彼から覗き込まれた

「俺も今の仕事好きじゃないんだ。俺は頭も悪いし、やりたいこともないし…土木は結構給料いいしさ、でも好きでやってる人とはやっぱり違うから今日怒られちゃったんだよ惰性で仕事するなって」

手に持っていた白いタオルを頭に巻いて後頭部で固結びにした。
「だから今のビルの内装終わったら辞めようと思ってるんだよね。」

「そ、そうなんですか。」

「だから、瀬戸さんもせめて俺が辞めるまでは今の仕事辞めないで。毎日昼休みにここで会おうよ」

「え?」

「約束だよ」
歯を見せて豪快にニコッと笑った。よく見たら、とても良い顔立ちをしていることに今更気づいて恥ずかしくなった。


まさかなと思い次の日も公園に来てみたが、当然のように彼はベンチに座っていた。
「よっ!瀬戸さん」
次の日も次の日も、土日が休みでたまたま同じであったから平日は毎日彼と話していた。

出身が神奈川県で血液型はA型で。背は高くてでも180センチにギリギリ届かなかったとしか教えてくれなくてきっと178か179センチなんだと思う。
彼も母子家庭で今はお母さんと高校生の弟と3人家族だということ。

就職してから最近は友達とも食事せず、母親を心配させないように実家にも帰っていない。
上司以外で私は会話をしていなかったものだから、彼との会話が楽しくて楽しくてたまらなかった。

そして彼の声はすごく心地のいい声だった。
少し低いが滑舌がいいのか、何を言っているのかしっかりと伝わる。そして良く通る。
綺麗な顔から発せられるとは思えないような落ち着いた声だった。

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