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恋の声

第2章 彼との出会い

「仕事の区切りがついたのが早ったのかな」
最近は上手に笑えない。彼と会っているのに。
今、私を支えてくれている唯一の心の支え。

「俺は今、休憩時間なんだ。疲れたよ…今日は瀬戸さん顔色いいね〜」

「う、うん。ありがとう」
彼は私のことを瀬戸さんと呼んでいた。

彼は2ヶ月前にこの公園で出会った。
このオフィス街に新らしく建設しているビルで工事のアルバイトをしているらしい。
頭に白いタオルを巻いているが少しだけ茶髪の髪が覗いている、黒いTシャツにダボダボの黄土色のニッカポッカを履いている。ポケットには軍手と財布だけが乱暴に突っ込まれている。

その日は、会社から始めて外に出て近くに公園があると見つけた日だった。
こんな所に…ここなら会社の人もよく会う営業の人たちも来ないはず…
公園は閑散としていて、ベンチには誰も座っていない。私は公園のベンチに座り空を眺めた。
もう何日笑っていないだろう。昼食の量も日に日に少なくなっている。体重も心なしか減ってきている。

あと50分ある休憩時間。その後はまたあのオフィスに戻らなければいけない。
誰も見方がいない場所に。

空を眺めていると雲が小さくなっていった。
あれ?あぁ気が遠くなるのか…
すぅと瞳を閉じた。目の前が真っ暗になるその時、


「…顔色悪いけど大丈夫ですか!?」

初めて聴いたが、とても心地の良い声…
もっと声を聞きたくなるような…

あれ?誰かに声をかけられた?
ゆっくりと眼を開けると目の前に男の人の顔があった。びっくりして瞳孔が大きくなる。
頬にパタリと水滴が落ちた。

「あ、ごめん。俺の汗が…」
頬に落ちた水滴を目の前の男は自分のタオルで拭き取った。
「あれ?タオルに付いてない…お化粧してないんだ珍しいね。だから顔色悪く感じたのかな?」

「あ、ちょっと気分が。寝不足なだけです。」
夜は本当に眠れていない。朝方になってやっと1.2時間眠れる様になり、遅刻ギリギリになるからお化粧している暇が無いだけで…
そう言えば、2.3ヶ月に一度掛けていた縮毛矯正も何ヶ月かけていなかったかな…

そう考えながら俯くと、その男性は私の隣に座った。
「俺さ、あれあのビル!あのビルの内装工事してるんだよね〜なんか依頼者のこだわりが強くてさぁ大変なんだよね…」

「は、はぁ」
なんか明るい男の人だな。

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