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恋の声

第2章 彼との出会い


オフィスに戻ると、私は机に着いた。


あれ?


これ……


自然に頬を伝うものがあった。


私の机には、母がくれたカバンが置いてあった。

私が就職したときに、母がプレゼントしてくれた
本当は欲しかったけど、言えなかったブランド物のカバン。
すごく高いものではないけれど、母や私にしてみたら決して安くはないもの。
言えなかったのに、気づいていたんだなと恥ずかしい気持ちもあり、こんな高価なものを買ってくれたのかという嬉しさと誇らしさがあった、私の宝物。


見るも無残にカッターナイフのようなもので無数の切り傷が入っていた。
パスケースの中に入れていた3人で映った家族写真はシュレッダーで細かく切り刻まれて机の上に散らされていた。


頬を伝うものが、次から次から伝ってくるから
視界が歪んで見えなくなった。

私の姿を見ても誰も何も言わない。
クスクスと遠くから笑い声だけ響いた。


私の隣の飯田さんが立ち上がり、部長と話しているのがなんとなく耳に入っていた。

部長が私の近くまで歩みを進める。
「瀬戸川さん。今日はもう早退しなさい。」

「はい」




早退しなさい

まるで私が悪いみたいじゃない



どうやって家に帰ったのかもう
覚えていなかった

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