恋の声
第2章 彼との出会い
社宅の鍵を総務部に持っていった。総務の人は夜中の電話番がいるから、守衛さんと総務の人は夜勤があったから、朝早くて必ず1人は人がいた。
「鍵を返しに来ました。今までありがとうございました。」
総務の社員さんは飯田さんと同じくらいの年齢の女性だった。
「あら、営業事務の方ね。お引越しでもするの?」
引越しではなく、辞めるんだとは言えなかった。
「はい。引っ越しです。」
出来るだけ明るい顔で笑ったつもりだった。
総務の社員さんは、何か気づいたような顔をしたが、笑顔で「そう。頑張ったわね」と一言、言ってくれた。
今までお世話になった部署の皆さんに挨拶しない無礼さや、勝手に退職届なんか出して一方的に辞めるなんて、最近の若い子は!と言われるだろうなぁと思ったが…もう出勤しなくても良いのかと思うと心が軽かった。
母の待っている車に戻る。後部座席には私の少ない荷物が詰められている段ボール箱が4箱程乗っていた。
時刻はまだ朝の7時くらいだった。
車を発進させて母が言う
「良い顔になってよかった。しかしこんな都内来たの初めてだわ…こっちの道であってる?」
母はハンドルを切る
「え!?違う違う、そこの道は、狭いよ!?」
この道は…真っ直ぐに進むとあの公園があって…
「あら?間違えたかな!?」と苦い顔をする母
車は私と佐々くんが何度となく会話した公園を通り過ぎた。
そのまま直進すれば佐々くんが働いているビルが見えてくる。まだ7時だし、いないよね…
そう考えていた瞬間
車がゆっくりと前に進む…人が狭い道を歩んで来る…佐々くんだ…
そう思った瞬間、道を歩む佐々くんと助手席に乗った私の視線が合った。
佐々くんはあっと声を上げたように口を開けた。
思わず私も佐々くんの顔を見つめてしまった。
佐々くんの隣を車で通り過ぎる。
私の胸は熱くなって、声をかけたくなる。
「どうしたの雪穂?知り合いだったの?」
母は横目で私のことを見ている。
「いいや。知らない人だよ。」
「なんだか、かっこいい人だったものね」母は笑いながら、私をからかうように言った
「そうだね。きっと声もかっこいいのよ。」
それが、私が見た佐々くんの最後の姿だった。
「鍵を返しに来ました。今までありがとうございました。」
総務の社員さんは飯田さんと同じくらいの年齢の女性だった。
「あら、営業事務の方ね。お引越しでもするの?」
引越しではなく、辞めるんだとは言えなかった。
「はい。引っ越しです。」
出来るだけ明るい顔で笑ったつもりだった。
総務の社員さんは、何か気づいたような顔をしたが、笑顔で「そう。頑張ったわね」と一言、言ってくれた。
今までお世話になった部署の皆さんに挨拶しない無礼さや、勝手に退職届なんか出して一方的に辞めるなんて、最近の若い子は!と言われるだろうなぁと思ったが…もう出勤しなくても良いのかと思うと心が軽かった。
母の待っている車に戻る。後部座席には私の少ない荷物が詰められている段ボール箱が4箱程乗っていた。
時刻はまだ朝の7時くらいだった。
車を発進させて母が言う
「良い顔になってよかった。しかしこんな都内来たの初めてだわ…こっちの道であってる?」
母はハンドルを切る
「え!?違う違う、そこの道は、狭いよ!?」
この道は…真っ直ぐに進むとあの公園があって…
「あら?間違えたかな!?」と苦い顔をする母
車は私と佐々くんが何度となく会話した公園を通り過ぎた。
そのまま直進すれば佐々くんが働いているビルが見えてくる。まだ7時だし、いないよね…
そう考えていた瞬間
車がゆっくりと前に進む…人が狭い道を歩んで来る…佐々くんだ…
そう思った瞬間、道を歩む佐々くんと助手席に乗った私の視線が合った。
佐々くんはあっと声を上げたように口を開けた。
思わず私も佐々くんの顔を見つめてしまった。
佐々くんの隣を車で通り過ぎる。
私の胸は熱くなって、声をかけたくなる。
「どうしたの雪穂?知り合いだったの?」
母は横目で私のことを見ている。
「いいや。知らない人だよ。」
「なんだか、かっこいい人だったものね」母は笑いながら、私をからかうように言った
「そうだね。きっと声もかっこいいのよ。」
それが、私が見た佐々くんの最後の姿だった。