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恋の声

第3章 悩ましくも臆病であった私


退職届を出してから、その日に直ぐに部長から電話があった。
君の気持ちは分かっただの、今まで気づかなくて悪かっただの色々言っていたが、特に耳には入らなかった。
私は無職生活が始まってしまった。

朝から晩まで、好きなことをした。母は一ヶ月くらい好きにしなさいと言ってくれたから、好きだった本を読んだら、いつもはしないのに、兄からゲームを借りてしてみたりと好き勝手に過ごしていた。

忘れていた縮毛矯正をかけて、服を新調した。
学生の頃の友人に会うと仕事は?と聞かれそうだったから、1人で出来ることばかりだった。


佐々くんのことは考えないようにしていた。
やることがないから、会いに行こうと思えば会いに行けた。
いつも平日は同じ時間にあの公園にいる。

臆病になって行けなかった。
土曜日の約束を破ったことも、ビルの内装が終わる前に私が仕事を辞めてしまったことも。

会いに行って待っていても、もう公園には来ないかもしれないという事も。

謝らなければいけないことはたくさんあるが、臆病な私は会いに行くことが出来なかった




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