恋の声
第5章 マネージャーの仕事
「俺はまだ、そんなに稼ぎがないから…立地のいい条件ですぐに飛びつきましたけど…
他の方は人気もあるし、ストーカー被害とかもある人達だから、安くこんなにセキュリティがあるマンションは最高だと思いますよ」
「皆さん…人気ですからね…」
エレベーターに乗り込み10階で止まる。
降りてから廊下を歩く。廊下は外からは見えないように吹き抜けの庭を囲むように廊下が続いている。
四角の形の大きなマンションだが、中庭があり中庭を囲むように4つの角部屋。
これは確かに立派なマンションだった。
1001号室の前で瀬戸さんはズボンのポケットからカードのような板のような不思議な鍵を出し、部屋を開けた。
「あんまり物がないんですよ。最近越してきたから。上がってください。」
「お、じゃましまーす」
少しだけかかとのある靴を脱ぎ、振り返って揃える。瀬戸さんはすぐ様、洗面所に行き手洗いうがい。喉にスプレーの様なものを吹きかけている。
私も風邪菌を室内に持ち込んではならないという責任感がふつふつと湧いてきて、同じように手洗いうがいをした。私がうがいしているところを何故か瀬戸さんは後ろから見守っていたから、少し怖かった。うがいチェックが入ったのだろうか。
私が自分のカバンからハンカチを取り出して手や口を拭いているのを見て、タオルを使ってくれて良いのに、と少しがっかりした様子だった。
リビングに足を進めると、たしかに何にもない。
カーテンやテレビ、机はあるがソファはなく私は床に置かれたクッションに誘導された。
リビングは20畳ほど奥には3部屋ほどあるようだった。
あたりを見渡すのは失礼だと思ったから、やめておこう。
うちは紅茶しかなくて…と白い飾り気のないティーカップに紅茶を入れて出してくれた。
ふわっと匂いが湯気になり上がってくる。嗅いだ記憶のある匂い。特に高いものではない、市販のティーパックだったので、何となく安心できた。
高いものなんで出されても味の違いは分からないから。
「まず、台本なんですが…これです。[僕しか知らない君の身体]のヒーロー桜木晴矢くんの役です!」
台本を机に出し、私に見せる瀬戸さん
「私、今改定前の台本持ってますよ。」カバンの中から私も台本を取り出す
準備がいいと喜ぶ瀬戸さんを見て可愛い人だなぁと見つめてします。