恋の声
第5章 マネージャーの仕事
タブレットから目を離した
顔を見上げるとかなり真摯な姿勢で私を見ている瀬戸さんと目が合う
「ご自宅ですか?」
「はい。俺の家…一応防音なんです。家で練習できるように…」
最近はリノベーション出来るマンションもあったりするが、職業柄防音の部屋住んでいるのは頷けた。
「すごいさすが声優さん…」
「いや、 友達に建物の内装してる奴がいてお願いしたから安く出来たんですよ」
しかしまだ時間が早いとは言え、男性の家に上がるだなんて流石の私も出来ない。
何もないとは思うが、初めて会った開口一番に口説き文句を言ってくるような男。
実は私は瀬戸さんのことを警戒していた。出来るだけ2人きりにならないように努めたり、近づいたりすることを避けていた。
しかし、瀬戸さんの瞳のなんと真剣なことか…
一生懸命にキラキラと瞳を輝かせて雪穂のことを見ている。頼みも仕事の内容だし断るのは違う気もする。
「…分かりました。瀬戸さんも明日は早いですからあまり長くは滞在しませんよ。それでよければ」
特に良い打開案も見つからず、私は瀬戸邸へと向かうことになった。
呼んでいたタクシーに2人で乗り込む。
タクシーの車内では瀬戸さんは話さず、台本のチェックしていなかった。
なんとなく顔を見ると目があった。
「車のなかで本とか見ると酔っちゃうんですよ」
と苦笑された。瀬戸さんが車移動を嫌う理由はこれだったのかな?基本夜の仕事終わり以外ではタクシーすらも乗らない人だったから、何となくそれが理由かもしれない。
車内は静かで、私もあえて話の話題を振るのも止めた。
タクシーは15分程走ったところで、車は止まり
どちらがタクシー代を支払うかの争いの末に半分半分ということで落ち着いた。
別に私が払えば経費で落とせたというのに…
オートロックの近代的立派なマンションであった。
私は瀬戸さんの後をついてマンションの中に入る
24時間受付に守衛さんがいるようなマンションだった。いくら人気声優とはいえ、こんな立派な部屋良く借りれたものだなぁと感心していた。
「知ってますか?ここ代表のマンションなんですよ」代表とは和田さんのことであった。
私も和田さんから部屋を借りている口。
「もしかして…うちに移動してきた皆さんそうなんですか?」