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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第27章 特別な場所


 各務は再びバイクを走らせる。
 絢音はバイクのせいにして、
 竜二の背中に頬を押し当てた。

 バイクは街外れの高台をひたすら上った。
 民家もなくただ木と草しかないような
 寂しい道を走る。


「着いたぜ」


 竜二はそう言ってバイクから絢音を下ろした。


「……ここ?」


 (何にもないけど)
 

「こっち来いよ」


 絢音は竜二の方へ歩いて行った。


「わぁ ――」


 高台から見下ろす街の夜景。
 特に今日は空気が澄んでいるせいかキラキラ光って
 とても綺麗だった。


「綺麗だろ?」

「うん。こんなとこに、
 こんないい場所があったなんて……」
 

 竜二はゴロっと横になる。
 絢音も隣に並んでコロンと寝ころんだ。


「空もお星さまもすっごく綺麗。
 なんだか手が届きそう」


 そう言って星空に手を伸ばす。


「……ねぇ、か ―― 竜二、さん?」


 各務は絢音が初めて自分を名前で呼んでくれ、
 ドキッとした。

 
「あ?」

「今日はほんとにありがとう。すごく楽しかった」


 竜二が絢音を見ると嬉しそうに微笑んでいる。
 それを見て竜二もフッと笑った。


「そうか」

「竜二さんの昔のヤンチャ話、
 2人からいっぱい聞いちゃったし」
 
「ヒデだろ。あんにゃろめ」

「あはは。私、今まで見た目怖そうな人に勝手な偏見
 持ってたみたい。話すと皆んないい人ばかりだった
 竜二とだって……」
 
「俺?」


 再び絢音の顔を見た。


「うん。初めて会った時、いきなりクリーニング代
 だって万札何枚も押し付けてくるし」
 
「あー……あれは、わざとだ」

「え?」


 今度は絢音が竜二を見ると
 竜二は星空を見たまま言った。


「同じ学校だ、とは言っても。所詮教師と教え子だし
 なんせ”ダサみ”だしー。お前と知り合う何らかの
 きっかけが欲しかった」
 
「竜二さん……」


 竜二は絢音を見る。


「あの時からお前のこと気になってた。
 かわいくて目が綺麗で。
 教頭からお目付け役押し付けられた時はマジ
 嬉しかった」
 

 各務の突然の告白に絢音の顔がかぁぁぁと
 一気に赤くなる。

 各務は絢音の上に被さるように上体を起こし、
 絢音を見つめた。

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