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my destiny

第4章 Pandora's box

【翔side】

智君が脇息を引き寄せて俯せになったから、少し心配になる。
あんまり食べてなかったし、やっぱり、この人、体調が悪いんじゃないだろうか。

二人きりだったら、もう連れて帰るところだけど…。

俺は、仕方なく立ち上がってハンガーから上着を取ると、なるべくさり気なく見えるように意識しながら、智君の背に掛けてやった。

何気ない素振りで触れてみたけど、俺自身が飲んじゃってるから、熱があるかどうか良くわからない。
気付いた智君がチロッと目を開けて、微かに笑った。

うん、まだ起きてるのね。

俺も、ちょっとだけ笑い返す。


「女性は出産の年齢があるから
いつまでもは、縛れないよね
でも、まだ若い人なんだろ?」


自分の席に座り直して言うと。


「…そう、です、ね…」


後輩の返答は歯切れが悪い。
(どうでも良いが、俺はこいつを見るといつもガガーリンを思い出す。)

何か事情があるのか?

まさか、相手が女性じゃない、ってこともないだろうけど。

仮にそうだったとしても、俺と智君のことを明かすつもりは更々なかった。


「さっきも言ったけど、要は覚悟だと思う
何を一番優先させるかだよね…
名を取るか、実を取るか、っていうか

真剣に相手のことを想ってるなら、
実を取るってことになるから、
気持が繋がってる以上のことは望まない、
くらいの
自分のエゴは諦める覚悟がないとね、
厳しいかな

冷たく聞こえるだろうけどね

不安なのは人情として凄くわかる
普通と違う、普通を諦めるって簡単じゃないから

2人で一緒に苦しむしかないと思うよ

相手が耐えられそうもなくて、
自分もしんどいなら
手放してやるしかないんじゃない?」


説教くさ…。
自分で言ってて嫌になってくる。

こういう時、年齢を感じるな(ちぇ)。

もっともらしく語っちゃってる自分が嗤える。
昔、カミングアウトしたくてパタパタしてた俺が、どの面下げて後輩に説教してるんだろうか。

我慢するしかなくて、全部飲み込んできた自分を思い出した。




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