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たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―

第6章 佐倉武・最終話



 実果留はフッと離れると、俺の首に抱きついてきた。


「わっ! み、実果留っ?」


 倒れちゃわないように、手を後ろについて体を支えた。

 こんな体勢で倒れたら、実果留が押し倒したみたいになってしまう。それはここではヤバい。野球少年達もいるし。


「マネ……しちゃった」

「は?」

「何でもないっ!
 武のバカッ! バカバカッ、バァーカッ!」


 顔を見せないまま、実果留が言ってきた。


「バッ、バカとは何だよっ! だいたい殴れって言ったのに、何……俺を、よ……喜ばすようなことをすんだよっ」


 本当に喜んでしまい、口ごもってしまった。


「だって……好きだから……」


「えっ?」



「私だって……武が好きなんだからっ!」



「み……実果留っ……」



 首に巻きつく腕が強くなる。

 実果留の心臓の振動がより伝わってくる。

 実果留のサラサラの髪が、俺の頬と実果留の頬の間で触れてくる。

 そして、かすかに香る実果留の匂い。


 あぁ……やっぱ一緒だ。

 昨日夢の中で感じ取れた、実果留の感触と匂いが、まったく一緒だ。


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