
たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第9章 杉並実果留・特別編
コンコンッ!
「やばっ……」
ドアのノックの音と共に急いで引き出しを閉め、ベッドから飛び降りてキチンと正座をした。
もちろん、プレゼントは引き出しに入れておくことが出来ず、またスクールバッグの中へと戻した。
私の一連の動作が終わったのを見計らったかのように、カチャッとドアが開き、グラスを二つ乗せたお盆を持った武が入ってきた。
「これ、おふくろから。オレンジジュースだけど」
「わ、わぁー、ちょうど喉が渇いてたんだぁ。ありがとー」
ホント……喉が渇くぐらい、(冷や)汗かいてるかも……。
私がアレを見てしまったことに気づいてない武は、普通に私の近くに座り、普通にジュースをローテーブルの上に置いた。
一度アレを見てしまうと、武の雰囲気が違って見える。
いつ迫って来るのか……そんなことまで考えてしまう。
でも……早まらなくていいんじゃないの? 私。今は武ママがいるんだよ?
いくら何でも、いつ来るかわからない武ママを気にしながらするとか、ないよね?
と思ったのもつかの間、
「おふくろさ、これからママ友とお茶しに行くんだと」
「……え?」
武がそう話してる間に、下の方で玄関のドアらしき音がバタン……とした。
「お。噂をすれば出たみたいだな。
あのオバン『夕方過ぎまで帰って来ないから、実果留ちゃんとたくさんお勉強しておきなさーい』って言いやがってさー。たくっ。どんだけ俺に勉強させるんだって話だよ」
「そ、そりゃあ……Eだから、しょうがなくない? あは、あはは……」
私は、乾いた笑い方しか出来なかった。
これで『今日』の可能性が、ますます高くなった……。
