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たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―

第2章 佐倉武



 *


 あぁー……だりぃー……。


 朝。俺はベッドから起き上がれなかった。

 いつもの寝ぼけとかじゃなくて――


「……38度9分。はい、お休み決・定ーっ!」

「うわぷっ!」


 ベッドのそばで、おふくろが体温計を確認し終わると、掛け布団を顔にまでかけてきやがった。


 こんな時期に風邪かよ! マジでありえねぇし!

 絶対言われるぞ、これ……。


「夏風邪引くなんて、バカなコよねぇー。ふぉーっほっほっほっー」


 おふくろは、体型にピッタリの豪快な笑い声をあげた。


 ほらな、言われたしっ!


「うっせぇよ! 親ならちょっとぐらい心配しやがれっ! うっ……うぅーー……」


 文句を言いながらガバッと起き上がるも、熱に負けて前に倒れ込んだ。


 あぁー、くっそぉー……昨日、学校で掃除中に、友達とふざけて水をかけ合ったのがいけなかった。

 7月だし、暑いから大丈夫だろうと思って……油断した。


 と後悔をしていると、部屋のドアからコンコンッとノックの音が。

 とっさ的に反応して、再び起き上がった。

 この時間に来るのは『アイツ』しかいないからだ。

 カチャッと開いて、顔を覗かせたのは――


「おはようございまーす……」


 やっぱり。実果留だ。

 今日も実果留は、俺が密かに胸を弾ませていることに気づくこともなく、部屋に入ってきた。


「実果留ちゃん、おはよう。あら、今日は髪を結んでるのねー」

「そう、暑くてー。けど、一本でしっかり結わくのはしたくなかったから、少しだけ」


 ……ヤバい。

 風邪に加えて、珍しくハーフアップした実果留。

 それと、三ヶ月前に『ぶっ飛んだ』とウソをついた、実果留の胸の感触を思い出すと――


 うわっ……熱が余計に上がりそうだぞ……。


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