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たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―

第3章 杉並実果留 



 *


 武の寝顔を見ながら、思い出を振り返った。


「………………」


 今思えば、私って……かなり大胆なことをしたよね?

 この武に……キス、するなんてっ……。

 わーっ、ダメダメッ! 思い出しちゃったら、私まで熱が出ちゃう!


 手であおいで、顔の熱を冷まそうとした。


「……っ、んー……」

「!」


 思わず背筋がピンッと伸びた。

 ビッ……ビックリした……。何だ、うなっただけかぁ。


 私は落ち着かず、腰を軽くあげて椅子を座り直した。


 武……あの時と変わらず、キスしても起きたりしないかな……って、な、なに考えてんの!? さすがに二回もしちゃあダメだって!

 それに……今はする勇気もないし、する資格なんてない。

 夕崎君が頭に浮かぶと、やましい気持ちをかき消した。



「……武」


 あの時みたいに、普通の声で呼んでみる。


「……スー……スー……」


 相変わらず気づかない。寝息をたてるだけだった。


「朝は……ごめんね」


 気づかないのを知っていながら、武に話しかけ続けた。


「武の言うとおり……好きでもないのにつき合うなんて、良くないよね。早く別れて……本当に好きな人とつき合うのがいいよね。
 けど……好きじゃないんだよ。
 私のこと……好きじゃないんだよ、きっと……」


「……スー……スー……」


「そうなんでしょ? 武……」



 目から涙がこぼれて、自分の手の上にポタリと落ちる。



「頭をぽんっとしてほしいのも……夕崎君じゃなくて、武なんだよ?」


「……スー……スー……」


「武…………好き……」


「……スー……スー……」


「好きなの……」



 武っ……。


 想いも涙も止まらなくなり、手で顔を覆った。



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