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注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第21章 処女膜閉鎖症

『失礼します。』




「産婦人科の黒木です。よろしく。」





『よろしくお願いします』と、挨拶してから丸椅子に腰掛けた。





「婦人科を受診したことはありますか?」





『ありません。』





「精神科の桜庭先生からお手紙貰ってて、鬱(うつ)によるホルモンバランスの乱れをチェックしてくださいって書いてあるんだけど。問診票は書いてくれてるかな?」





『どうぞ』と、両手で手渡した。





問診票をざっと見てから「空欄多いね。う〜ん、生理は来てるの?」と、聞かれた。




『ずっと来てないです。』




「最後の生理はいつかな?」





『思い出せないくらい前です。』





「その時は生理痛はあった?」





『多少はあったかも。』




「初潮はいつ?」




『12才の時です。』




「妊娠・分娩・中絶の回数はゼロ回でいい?」




『はい』




「お腹が痛くなることはある?」





『あります。』




「アレルギーはある?」




『ないです』




「山口さんは性交渉の経験はある?」




『はあ…?』





ありきたりの質問の後に
デリカシーのない質問。





「個人的な興味で聞いてるわけじゃないよ。」








"性交渉"っていうのは挿入すること?

男性のものが全部入りきらないといけないの?それとも先端だけでも入ればいいの?

それとも射精が終わるまで?







「つまり、エッチしたことある?」







答えに困る。


『ない』と、答えたならば22才で処女だと知られてしまう。それではプライドが許さない。







「そんなに考えないと答えられないことかな。」






『私、性交渉したことあります。』





自信満々で、嘘をついてしまった。
問診なのに、嘘をついてしまった。




「あるならできるね。隣の内診室で準備してくれる?看護師さんがお手伝いしてくれるから」






『内診するんですか?』





「性交渉したことあるなら問題ないでしょ?」





婦人科医は冷たく吐き捨てるように言った。





「一旦診察室から出て廊下で待ってて。看護師さんが声かけてくれるから」





私は、急かされて診察室の外に出た。




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