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注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第44章 2度目の透析★

問診の後にアルコール消毒されヒヤッとした。







「この前太い針で痛い思いさせちゃったから
ほんの少しだけど細い針を取り寄せといた。」








「特別サービスだ」みたいな言い方だけど、
私が見る限りでは前回とたいして変わらない。







『はぁーーーーーー。』








「それはなんの"ため息"なんだ?」








『別に、なんでもないです。』








「それじゃチクッとするよ。」








『やだやだぁ。待って!』








「待たないよ。待ってもしょうがない。」








『ギャアーー!痛いってばぁーー!』







「やかましいな。動いたら危ないよ。」








『やめてぇーー!」







「もう針入ったよ。おかしいな、洋輔より僕の方が穿針スキルが上のはずなのに。」







『でも痛いよぉ。』







「まだ反対側の血管の穿刺が残ってるよ。
もう一回、腕だして。」








『痛いんだもん。』







「反対側もやらないと機器が回せない。」







『回せなくいていいもん。
透析なんてしなくていいもん。』








「そうはいかない。研修医の先生に、動けないようにがっちり体を固定してもらおうか?」








私の答えを待たずに、体育会系の男性研修医がきてしまった。







「山口さん、こんにちは。研修医です。穿針事故の回避のために、しっかり体を抑えますね。」






ベッドに上がった研修医は、脇の下に腕を差し込んで力を込めて固定した。







研修医が「痛くないですからね。頑張りましょうね」と声掛けをしているうちに、穿針は終わった。









「これで準備OK。研修医はもういいよ。」








私の体から研修医が離れると
透析機器が大きな音で回り始めた。







「もし気分悪くなったら、そばにいる看護師さんに声掛けてね。」






「遠慮せず早めに伝えるように」と念を押してから黄色いカーテンの外へ出ていった。





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