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注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第14章 フェロミア

「そのやり取りはいつまで続くの?
いい加減にしたら?」






ドア付近を見ると脇坂先生が腕組みをしたまま
だるそうに立っていた。





いつの間に…?





「内田くん、忙がしい時間帯にわがままに付き合わせちゃってごめんね。あとは僕に任せてくれれる?」





「わかりました。薬はここに置いておくので、あとお願いします」





内田くんが出ていってすぐに「なんでお薬飲まないの?」と、強めの口調で問い詰められた。





『だって副作用が…』





「どんな副作用?」





『吐き気』





「それは今も?」






『今は平気だけど』






「それじゃあハンバーグを食べながらでいいから僕のお話きいて」





先生からのお許しが出て、やっとデミグラスハンバーグとご対面!




いただきます〜!





『ううん、おいしい』






「あのね、貧血薬は副作用があってもやめるわけにはいかないの」






『だけど…辛くて』





「吐き気が我慢できないなら
食後服用に変更する?
食後なら胃の負担が軽くなって
ムカムカしないはずだから」






『でも、できたら飲みたくない』





「それはできない。透析が始まるまでは強い薬を使わないと」





『でも…』





「でも、じゃないよ。さっきみたいに内田くんに迷惑かけちゃ駄目」





『…ごめんなさい』





「迷惑かける相手は僕だけにして」





『…はい』





「わかった?わかったらお話終わり。顔上げて」





顔をあげると、いつもの優しい脇坂先生に戻ってた。





「錠剤は飲みにくいみたいだから明日からシロップを試してみようね」





『はぁい』






「とってもいいお返事だね」





脇坂先生が大きな手を頭にのせて
誉めてくれた。

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