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注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第2章 僕の診察室

1時間前まで自分が病気になるなんて考えもしなかった。



イケメン医者は、目で見て嗜む(たしなむ)ものだと思ってた。




急に入院なんて言われても、全然現実感ないし。




「美優ちゃん、どうかした?」




「いえ」




「これ入院の申込書ね。ここに氏名と日付を記入して。保証人の欄は、ご家族にお願いしたいんだけど」




『私は東北出身なので…』





美優ちゃんは言葉を選びながら、ゆっくり話始めた。





『家族と呼べる人達は、あの日あの海に消えてしまいましたーー』





「東日本大震災で亡くなられたの?」





『はい』






「そうだったんだ。辛いことを思い出させてしまって本当にごめん。保証人の欄はフラワーショップの店長さんでいいよ」





『でもまだ兄の遺体が見つかってないんです。だから兄の事はまだ諦めてないって言うか…いつかまた会えるような気がしてます』





「大変な思いをしたんだね。僕に話してくれてありがとう。お兄さんとはまた会えるといいね。僕も心からそう願ってる」





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