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注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第16章 精神科 急性期閉鎖病棟

トントン





「どうかな?少しは落ち着いたかな?」





やっと桜庭先生が回診に来てくれた。






『遅い。待ってたのに。』






「ナースステーションで監視カメラ見ながら
様子を観察してたんだよ。」





『どうでもいいけど早くこれ外してよ。』





「今日は初日だから、もうしばらく拘束させて」





『いやだっ。絶対にやだっ。外してよ』





「保護室で暴れたり騒いだら、すぐに安定剤注射して鎮静かけるからね。注射、すごく痛いよ」





『そんなこと言ったって、両隣の患者さんだってずっと叫んでるじゃん』





「隣の人の声、うるさい?ごめんね。覚醒剤中毒の患者さんなんだ」





『私を静かにさせる前に、隣を静かにさせたらどうなの』





「ちょっとイライラしてるみたいだね?」





『ふざけないで。誰のせいだと思ってるの?』





「食事の時は手だけ外してあげるから、あんまりイライラしないで。美優ちゃんは精神科に"心のお休み"に来てるんでしょ?」





『それは口実で本当は、私に"懲罰"を与えるために精神科に追いやったんだと思う。』





「脇坂先生はそんな人じゃないと思うけど。」




『だったらこの状態は私の"被害妄想"?』





「精神科は治療はするけど"懲罰"は与えないよ。保護室も拘束もすべて安全のためだから」




「そこは勘違いしないで」と、桜庭先生が付け加えた。










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