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注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第16章 精神科 急性期閉鎖病棟

私は、一度冷静になり『今、何時ですか?』と尋ねてみた。





「もうすぐ6時。」





そろそろ夕食の配膳時間だと教えてくれた。





良かった。食事の時に手だけ自由にしてもらえる。





「あ、ごはん運ばれて来たね。食後にもう一度回診に来るから、またお話しましょう。それじゃあ。」と、桜庭先生が出ていき、代わりに成井さんが、食事のトレーを持ってきてくれた。





「お腹空いてるんじゃない?夕食にしようね。」




発泡スチロール製のテーブルを私の前に置いた。





なぜ発泡スチロール製なのかと言うと、テーブルで自分の頭や体を傷つけないため。そしてテーブルを壁に投げたりしないようにするため。






『成井さん、食事の時は拘束具外してくれるってさっき桜庭先生が。』






「そうだね。外そうね」と、白衣のポケットから鍵を出してカチャッと両手の拘束具を外してくれた。





「手首が少し赤くなってるけど痛い?」






『うん。…痛いよ…』





「後でクリーム持ってきてあげるから我慢して」





何をどう我慢しなくちゃいけないのか…?わからないけど、成井さんは親切な人だと思う。




「食事投げたりしないって約束してね」




『…うん。わかってる』




「それじゃあどうぞ召し上がれ」





メニューは、すべて手掴み食べできるものだった。




お箸を使わなくていいように、丸いおにぎりだったし、おかずも一口サイズだった。




「ゆっくり食べなね」





黙々と食事をしている私のことを
成井さんは側で優しく見守っていた。




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