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果てなき場 ~ boundless field ~ ①

第2章 神の宮殿

神の宮殿はアポロンの丘と呼ばれる三方が断崖の丘のうえに建っている.
人々は神の宮殿を遺跡のようなものと思っているが 千数百年まえ忽然と現れたと伝えられている.
外壁は光輝き石なのか金属なのかわからなかったが長い年月にも耐えて少しも劣化しない.
入り口があり扉がないように見えるが中に入ると出られなくなるとおもわれている.
いつしか神の宮殿と呼ばれるようになった.
ゼルバはそっと姫の肩に手をおいた.
皇帝の妃は貴族の家柄のもっとも美しい娘が選ばれることになっている.
結局それが公明正大で貴族の勢力争いを抑えることにもなる.
このため帝家はきわめて美族の家でもあったが スウィイト皇女はそのなかでもとりわけ美しい娘であった.あと少しで十九歳になる.
ゼルバはディバイン家の惣領でひとり息子であった.
天才軍学者の誉れ高く父は彼が二十歳のとき家督を譲り妻と穏やかな隠居暮らしをしていた.
いまゼルバは二十二歳になる.

ディバイン家の祖の天衣無縫の御子は自ら皇族を離れ野にくだって自身の戦場の経験に基づいて軍学を研究した.
兄宮は五十一代皇帝に即位すると天衣無縫の御子 そのときオリヤ ディバインと名のり市中で軍学者としての生活をしていた弟宮に公爵の爵位をおくり皇帝自らディバイン流軍学の門下となり弟を師として仰ぎ終生弟に師の礼をとった.
歴代の皇帝もみなこれに習ったため ディバイン流の軍学を御流儀と呼ぶようになった.
エブル公爵家の祖は 豪農フィドル家だった.
フィドル家は荘園開発にたけて大規模で優良な荘園を多く所有していた.
宮家に荘園を盛んに寄進してついには宮が降嫁するに至り宮廷の費えも長年にわたり多く負担しているため宮家の口添えもあって公爵家となった.
財力にものいわせて私兵を多く抱え正規の帝国軍の騎士のなかにはエブル公爵に借財のある者もおおい.
近衛にも私費で兵を提供していた.
ディバイン家は学者の家として私兵を抱えることはしていない.
軍学者として領地経営はしっかりとした考えを持っておこなっていたのでディバイン家は豊かであった.
食糧生産ほ重用なこととして領内の荘園開発もおこなったが領民に労役や無理な労働を強いるようなことはなく対価をもってした.
税も薄くして領民はみな豊かでディバイン家を敬愛していた.










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