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sweet poison【BL】

第3章 絶望の中の行為

熱い、のだ。

そしてむせ返るように、紅茶のあの甘い匂いが自分の中に広がっている。

「がはっ、ごほっけほっ」

両手で口元を押さえ、激しく咳き込む。

甘い匂いを吐き出したくて、ひたすら咳を繰り返した。

「痛みとか苦しみはあんまりないでしょう?」

羽月は紙コップを床に置くと、自分の手に付いた紅茶に視線を向けた。

「苦痛の少ない毒薬って、匂いが強いのが唯一の欠点でね。それを隠す為に香りの強いブレンドにしたんだよ」

羽月の言葉に、頭の中が一瞬真っ白になった。

―毒薬? 羽月は今、そう言ったのか?

なら自分が飲んだ紅茶は…。

「毒薬は母さんから譲り受けたんだ。父さん達からもう逃げ切れないと思ったら、二人でこれを飲んで一緒に死のうねって。でもまさか陽一に使うことになるなんてね…」

「はっづき…、何でっ…!」

熱の苦しさに涙ぐみながら、羽月を見上げた。

「…ゴメンね。ボクもすぐに逝くから」

羽月も…ということは、これは心中。

陽一は何も告げられないまま、心中を強制されてしまったのだ。

「ボクは陽一と離れ離れにされることだけは絶対にイヤなんだ。陽一だってそうだよね?」

確かに思っていた。

羽月と離れることはイヤだと。

でもこんなことを望んではいなかった!

「だから一緒に死のう? 今ならまだ二人一緒にいられる。この場所だって、ボク以外の誰も知らないし」

山の中にある空き家なだけに、どんなに暴れようが大声を出そうが、誰にも気付かれない。

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