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兄弟ですが、血の繋がりはありません!

第12章 血液はいつかの鉄棒の味がする


悠が居なくなってしまったら、それと同時に自分の存在理由さえもなくなってしまうような恐怖でいっぱいになった。

そうなってしまったら、オレは益々空っぽになってしまいそうだ。

夢とかやりたい事とか何も無くて。

大学進学も迷ってて。

それだって悠の選択肢を増やしてあげたいなんて綺麗事を言ってみたけど、結局は自分を守る為の嘘。

やりたい事がないオレが大学に行った先に何があるのか。周りが就きたい仕事に就くために努力したり、叶えたい夢を見るために行動を起こしたりする中で、今よりもっと取り残された自分を見たくないからだ。

・・・なんだか逆にすっきりした。

先生や両親になんて言い訳しようって日々考えていたのが、答えが出たらもう考えなくていいんだって思ったら凄くすっきりした。

「…痛い」

気づかなかった。感情のままに握りこんだ拳を開くと爪の形に切れて血が出ていた。

オレは少しばかり伸びただけの爪が皮膚に食い込むほど手を強く握っていたのか。

「…っあー、痛い」

傷口を舐めると鋭かった痛みが鈍い痛みへと変わって。

ベロの上に残った血の味が。

「は、鉄棒の味じゃん…」

なんだか幼い頃の記憶と混ざった気がした。

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