テキストサイズ

その恋を残して

第7章 眠り姫……か

 確かに……。俺は結局、自分の存在すら認めようともせずに揺らいでいた怜未を、ほっておくことができなかった。

「俺は怜未を……彼女の存在を認めたくて……」

 俺は膝の上の両手をギュッと握った。間違っていたとは思いたくない。しかし、俺のせいで今の状況があるとするのなら……。

 俯く俺を横目に、誠二さんはふっとため息を洩らした。

「言っておくが僕だって、なにも怜未に消えてほしいと思ってるわけじゃない。彼女を『交代人格』と考えた上でも、その意思を尊重し認めようともした。だが、君の場合は立場が違うはずだよ」

「それは……どういう意味ですか?」

 そう訊くと、青信号にアクセルを踏み込みながら、誠二さんは言った。


「蒼空が、恋をしている相手だから」


「――!」

「もし、君が蒼空と怜未――二人と等しく恋をしようというのなら、僕はそれを認めるわけにはいかない。医者としても義兄(あに)としても、ね」

「…………」

 絶句するしかなかった。誠二さんの言葉は、俺が曖昧にしていた部分を容赦なく貫いていた。

「只でさえ高校生の淡い恋愛が、生涯に渡って成就することは難しいことだろう。その上この場合、その難解さは他の比ではない。それが何故だか、わかるかい?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ