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その恋を残して

第7章 眠り姫……か


 家の近くで車を降ろされて暫くの間、俺は為す術を失ったようにその場に立ち竦むしかなかった。

「…………」

 でもやがて、結局はそのまま帰宅している。

「な、なによ。驚くじゃない。『ただいま』くらい、言いなさいよ」

 無言で玄関に立つ俺の姿を見て、母さんは言った。

「……ただいま」

 俺は機械的に呟くと、部屋へと向かう。

「ご飯、できてるわよ」

「いらない」

「いらないって、ちょっと!」

 背中を向けたまま階段を上った俺は、その時の母さんがどんな顔をしたのかは見ていない。

 逃げ込むように部屋へ入り、そのまま閉じこもっていた――。

 灯りも灯さない暗い部屋で、俺は一人なにを考えていたのだろう?

 それをよくは覚えていないけど、でも、たぶんこんな感じだったと思う。


 蒼空と怜未、とにかく二人のことを心配する――。

 居ても立ってもいられない気分が沸き上がり――。

 会いたい。会いに行こう――と、思い立つ。

 だけど、俺になにができるのか――と、考える。

 誠二さんに、言われたことを思い出す。

 俺が、蒼空を苦しめたかもしれない――と、己を責める。

 だったら、俺が行ったって――自分が無力なことを、思い知る。

 頭を抱え、考えるのを止める――。

 暫くして蒼空と怜未の顔が脳裏に浮かび――また心配になり。

 ひたすら、それの繰り返しだった。


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