その恋を残して
第8章 ……ちゃった、ね
※ ※
夕暮れの頃。街中を抜けて、俺たちは田舎の長い一本道を歩いていた。
その途中で――
「まだ家までは随分とあるし。沢渡さんに、迎えに来てもらおうか?」
俺が訊くと――。
「もう少しだけ――歩くのが嫌になるまでは、歩きたいんだ」
怜未は、そんな風に答えていた。
そのまま歩き続けて暫く。小高い山の麓まで来た時に、俺たちの前に姿を現したのは、赤い鳥居。
特に言葉を交わしたわけじゃないけど、二人の足は自然と石段を上り、小さな神社の境内に入って行った。
「ここ、初めて来たな……」
俺は足を止め、辺りを見回す。境内には俺たちの他に誰もいなくて、空気が張りつめたように静まり返っている。
ザワザワと――時折、吹いた風が木々を揺らす音だけが耳に届いた。
「怜未――?」
気がつくと、怜未は俺に向かい合うように立ち、その顔を俯かせていた。
風に揺れる前髪が、その瞳を隠している。
「松名くん……」
怜未は、震える声で俺の名を口に。
キュッとすぼめた肩、その全身をも小刻みに震わせ。
徐に顔を上げると、俺の目を見据えた。
そして――告げる。
「私、松名くんのことが――好きなの!」
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