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その恋を残して

第8章 ……ちゃった、ね


    ※    ※


「――!」


 俺の中に流れ込んできた二つの想い。それは『夢』ではなかった――。

 目の前では今、怜未が虚ろな表情で佇んでいる。

「松名くんなら、その答えを導いてくれるって信じてたよ……」

「ま、待って……!」

「すごくドキドキして、とても嬉しくなって――苦しい時だってあったけど、それよりも、ずっとずっと――楽しかったんだ!」

「れ、怜未!」

「全部、この恋が……松名くんが、私にくれたの」

「怜未――駄目だ!」

 俺は怜未に駆け寄り、強くその肩を抱いた。

 でも――怜未は静かに、その首を横に。

「初めて蒼空の気持ちを知った時から、この日が来ることはわかっていた……」

「怜未……そんな……」

 そして怜未は俺を見上げ、ニコッと微かな笑みを浮かべる。


「蒼空のこと……お願い……ね」


 それから――怜未の瞼がゆっくりと――


「怜未、行くなっ! 俺は――」


 ――――閉じて、ゆく。


 俺は怜未を繋ぎとめようとして、その身体を抱いた。

 だけど、同時に――。


 ああっ……!


 その感触が、ふっ――と。

 俺の腕の中で、変化したことを実感する。


「松名……くん?」


 その時、俺の腕の中に居たのは――蒼空だ。

「そ、蒼空――ゴメン! 俺……俺は……」

 俺は蒼空にすがるように、大声で泣いた。涙が止まらずに、泣き続けていた――。

 その髪を優しく撫でながら――


「怜未……さようなら」


 蒼空がそっと、呟く。

 蒼空の声も泣いている――。

 それがわかり、俺はもっともっと――哀しくなった。


 怜未は、去っていった。

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