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その恋を残して

第2章 好きじゃないから……


「あ、ああ……」

 なんとかそう答えた俺の、その心臓は飛び出しそうだ。

 しかし、俺たちを眺める沢渡さんの視線が、少し俺を冷静にさせる。それは、なにかを危惧するような、そんな視線であった。

「それでは、お願いいたします」

 沢渡さんは、一礼をした後に車に姿を消す。

「では、行きましょう」

「うん……」

 帆月を濡らすまいと気を遣い、歩調を合わせながら校舎へと歩く。只でさえ動揺している俺に――

「もしかして、私を待っていてくれたんですか?」

 すぐ近くの帆月の口が言った。困惑、そしてドキドキが止まらない。

「そう――待っていた」

 でも、それはキミのことを、好きじゃないと言う為――だけど、

「フフ、嬉しいです」

 頬を微かに赤く染める帆月に、もう言えるはずはなかった。

 そして当然、俺は気がついている。今日の帆月も、昨日の帆月とは違っていることを……。


    ※    ※


 目的を果たせぬままに、今日も授業に身の入らない。そもそも、身の入る時があるのかと、疑念を抱かれても仕方がなかった。

 またしても自然と、帆月の後姿を見ている。昨日は少しだけ毛先が跳ねていた髪も、今日はストンと真っ直ぐに整っていた。そんな観察をしつつ、これからどうすべきか考える。

 これほどに、帆月のことで頭が一杯なら、いっそのこと逆告白じゃなく、本当の告白しちゃえばいいのではないか? ――なんて。

 ブンブンと頭を振り、俺は自分の考えを打ち消す。そしたら――

「お前、なにしてんの?」

 田口が、ジトッとした目つきで俺を見ていた。

「な、なにって……お前こそ、今は授業中だぞ」

「終わったよ」

「あ……」

 既に教師はおらず、教室内は休み時間の緩和した空気に満ちている。

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