テキストサイズ

その恋を残して

第2章 好きじゃないから……

「その言葉って、アンタが正しいと思って言ったこと?」

「それが、自分でもわからないんだ。思わず口走っていたから……」

「だったら、自分が軽率だったことを、まず詫びなさい。自分の中で答えが出てないなら訂正しようもないでしょ?」

「……そっか」

「あと、焦って答えを出そうとしないこと。特に、理屈で考えたってわからないことにはね」

「考えてもわからないことに、答えは出るの?」

「うん。出るよ。いつか必ずね」

 母さんは、そう言って笑った。



 自分の部屋に入り、鞄からスケッチブックを取り出す。その間に挟まっている帆月の絵を出して、それを机の上に置いた。

 俺は鉛筆を手にして、右目から伝う涙を描き加えた。それは、俺があの言葉を言った時の涙だった。


『俺は帆月さんのこと、別になんとも……好きとかじゃ、ないから……』


 何故、あの時、それを言ったのか自分でもわからない。只、好意的に接してくれた帆月に、俺が戸惑っていたことは確かだった。

 帆月に、どう応えていいのか俺はわからなくて。帆月に関する謎は、どんどん深まっていって。その分、彼女への興味は怖いくらいに膨らんでいて――。

 困惑して混乱して、朝に言おうとしていた逆告白が口をついて出てしまった。そんなことかもしれない……。

 でも、涙を描き足した帆月の絵は、とても悲しげ。それを、そのままにしておくのは嫌だと思う。俺は消しゴムを持ち、描き加えた涙を丁寧に消した。

「絵の涙は簡単に消せるのに……」

 俺は思わず、ポツンと呟く。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ