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その恋を残して

第2章 好きじゃないから……


    ※    ※


「…………」

 夕飯の時。俺は箸を止めて、この日のメインのおかずである、から揚げをぼーっと見つめる。

「プッ――!」

 その顔を眺めた俺の母親が、突如として吹き出した。

「な……なに?」

 そんな母親の顔を、俺は睨みつけるが、

「ゴメン……マジな顔をしちゃってるの見たから、つい――」

 悪びれた様子もなく、母さんは言う。

 酷い話だ。息子の真剣な表情がツボに入るって、一体どういうことなの? まあ、そんな処も、俺の母親らしい部分ではあるけど……。

 俺は、そんな母親との二人暮らし。母さんは仕事で遅くなることが多いので、こうして揃って夕食をするのは久しぶりであった。

「そういう場合、『なにかあったの?』とか、心配するんじゃない? 普通は」

「じゃあ――なにかあったの?」

「そのまんま言うなって。少しは工夫してよ」

「だって、アンタ――どうせ言わないでしょ?」

「まあ……そうだけど」

「大体ね。日々、必ず『なにかはある』の。毎日、同じつもりでいたら面白くないでしょ」

 それはそうかもしれないと思う。今、俺は帆月蒼空のことで悩んでいる。ここ数日、頭の中はモヤモヤしっぱなしだ。だが、だからといって、彼女が俺の前に現れなかったら良かったのに、とは思わない。

 暫く食事を続けてから、俺は不意にこう訊いた。

「自分の言葉で人が傷ついたとしたら……その言葉は、訂正した方がいいかな?」

「なにそれ? 具体性の無い質問ね」

「だって、具体的には言いたくないし……」

 その質問に母さんはやや不思議そうな顔をしていた。それでも、顎に手を置き、ウーンと難しい顔をして考え始める。

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