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その恋を残して

第5章 それは、おとぎ話だ

 夜更かし――その言葉を聞いた瞬間に、俺にある考えが浮かんだ。

「あのさ、蒼空……あくまでも、もしもの話なんだけど」

「はい――?」

「蒼空が夜になっても、眠らなかったら。その日は、怜未と入れ替わらないのかな? ――なんて、ふと思ったんだけどさ」

「私、徹夜なんてできませんよ。夜はすぐに眠り就く方ですので」

「そうかもしれないけど。でも、そんな風に考えたことはない?」

「ありません。だって――」

 蒼空は、真剣な顔をする。

「それで、もし本当に怜未が現れなかったら。そう考えると、私……」

「あ、ゴメン、変なこと聞いたりして。思いついたことを話しただけだから、蒼空が思いつめることじゃないんだよ」

「はい。平気です」

 そう言って返された笑顔に、ほっと胸を撫で下ろす。そうしながら、俺はくだらない質問をしたことを後悔した。それと同時に確認したことがある。

 蒼空は間違いなく、怜未と共にあることを望んでいる。この先も、ずっと――。

 逆に怜未が本当にいなくなってしまったら、それこそ蒼空の喪失感は量り知れない。怜未という存在が『本物の意識』であろうとも『作られた人格』であろうとも、怜未が蒼空の精神の安定を保っていることに変わりないとすれば――?

 もしそうなら、怜未が消えることなんて、蒼空自身のためにもあってはならないことになるのではないか。

 「怜未に関わるな」と、誠二さんは俺にそう言った。だが、怜未が自分から消えようとするのならば、それを俺は止めなければならないと、強く感じていた。

 それが、きっと――蒼空のためでも、怜未のためでもあると、そう信じて。

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