
テレフォン -約束-
第8章 冬の蝶
「レナちゃん、また…」
「…携帯?」
他の嬢達からの失笑を受けて“まー君”の愛の失調を示す携帯電話のバイブが唸っています
まだ、離れて2週間も経たないけれど、通話料がかからない専用電話は幾度となく唸り“せせこま狭い嬢の部屋”の中では、既に話題の中心でした
そんな“まー君”の
募る募る募る不安は、携帯での通話が癖のように変化してゆき
紡ぐ紡ぐ紡ぐ愛情は、受話器のデシベルで伝えることでした
・・・・それは
生理休暇の偏頭痛に耐えるベッドの中でも…
ペディキュアを片方しか塗れていない時でも…
・・・・そして、
今のように待機している時もです
さすがに、シゴトをしている時は話せないけれど、寄り添い、付き添えない分、アタシは時間が許す限り、お話を聞きました
同じ時を過ごしていた2人の時間は
あの飛行場までの電車の中で“まー君”の焦点が合ってないように感じた
雨雲のようにぼやけるように感じながらも
“約束”を胸に刻みながら、アタシは不平や不満を言わずにお話を聞いていました
